士を拝んで、その向こうの八幡宮に行く道の先に、心鎮まる建物があります。
ここは薬草園だった所ですが、今は大学になっていて、なんと美智子妃殿下が
年に数回おいでになります。

童話を研究される妃殿下が、講義をなさるのだとか。
そうと知らない買い物帰りの私を呼び止めるのは、警護の人。

でも警戒のチェックではないんです。
「妃殿下がもうすぐここをお通りになりますよ、
この辺りならお近くで
ご覧になれます」
と、案内して下さるのです。

ほんの間近で手を振られる妃殿下は、息が詰まるほどの清らかさです。
映像では雰囲気までは分からなかったけど、やっぱり特別なものがおありです。

今この校門に妃殿下はおいでではないのに、その印象がありありと蘇って、
なんだか女正月が華やぎました。

 

そして八幡宮、掃き清められた境内に朝の光が差し込んでいます。
祭壇に額づき祈り込めて、穏やかな年明けの感謝を捧げます。

清らかな風が、しめ縄をふ~と揺らしてそれに応えてくれました。
左上の枝は梅。枝先がほんのりふくらんで、ここにも初春が宿っています。

ありがとう、ありがとう。 そうとしか言えない有難さです。

 

今、ここに在ることを喜べることにも、ありがとうです。
だって、家に向かえばこの森が、悠然と迎えてくれるのです。
裸になった木々の先を、太陽がまばゆく囲みます。

足元には枯れ葉がフカフカの道を作ってくれて、
雲を踏むってきっとこんな気分でしょう。

枝先で戯れている小鳥二羽、カメラを向けたら、
チチと小さな挨拶をくれて逃げられました。

ありがとう、ありがとう。 そうとしか言えない有難さです。

 

もうひとつ私事の、ありがとうがありました。

92才の誕生日。私の母の義理の妹です。彼女は老人ホームで
20年を過ごしました。痴呆症でしたが看護師さんの名札を読んで、
必ずその名前を呼びながら言葉をかけました。

「〇〇さんありがとう。〇〇さんおいしいね?」
だから誰からも好かれて、素直な人でした。

この誕生日から3か月後、彼女は天国に旅立ちました。
次の写真はその何週間か前のものです。
満たされた顔をしていてほんとうに美しい。

最期に立ち会った彼女の姪は、すぐにはお医者さんを呼ばないで、
しばらくベッドに頬杖をついて、その顔に見とれていたと言います。

こんなにも美しく人生を終えるものなのかと、感動を覚えたと、
その人は私に伝えてくれました。

彼女の人生は多難に満ちていたけれど、そこで得たものは、
人に対しての親しみと明るさだったのだと、その顔が物語って
いたそうです。有難くて深い話でした。

新年にあたり、この頁から、美しく清らかなものたちが皆様のお心に届いて、新らたな年の英気を養えますように…。
今年もどうぞよろしくお願い致します。